アーティストで音楽プロデューサーのつんく♂さんは以前、母校・近畿大学の入学式でスピーチを行った際、喉頭がん治療による声帯摘出を公表しました。

ファンの方にとっても、喉頭がんの後遺症によって声を失ったことが、大きなニュースになったことは記憶に新しい。

その後、食道発声法のトレーニングに励んできたつんく♂さん。実は『声が出るようになった。』と話題になっています。

かなり小さいので聞き取りにくいものの、声はきちんと出るんです。

少しだけなら会話もできるようなんです。

喉頭がんによる声帯摘出から、食道発声法について詳しくご紹介していきます!


つんく♂さん喉頭がん・声帯摘出から『声』を取り戻すまで

喉頭がんで声帯摘出のつんく♂の声が復活!?食道発声法と人口音声への期待とは

シャ乱Qのボーカルで音楽プロデューサーのつんく♂さんが、喉頭ガンのため声帯を摘出したのは2014年10月のことです。

その翌年4月に母校・近畿大学の入学式で、声を失ったことを発表した光景は、いまだ記憶に新しいですよね。

そのつんく♂さんが、いま食道発声法によって『意思疎通が出来るようになってき』たことを、「病の『人生学』」に寄せた手記で明かしたようです。

 

声を取り戻しつつあるつんく♂さんですが、やはりガン患者としてさまざまな思いに翻弄されてきました。
つんく♂さんは、ガンとわかる前から大きな病院の声帯専門の医師のもとに通っていました。

それも『20年来同じ先生に診てもらって』いたが、シャ乱Q結成25周年記念ツアーのあと、声枯れが長く続いたため、検査してみるとガンと判明したのです。

 

【食道発声法】食道入口部を空気で振動させる

食道発声法とは『声帯を失った人が口や鼻から空気を取り込み、それを逆流させて、食道入口付近の粘膜を振動させることによって声を出す』という方法です。

これには練習を要し、なかなか習得できないために諦めてしまう人も多いらしいんです。

つんく♂さんも自分で試したときは全く音にならなかったとのことです。

しかし、レッスンの最初の日に『あ』というような音が出せた。

以来、練習を重ね、現在、騒がしい場所ではスマホのアプリを使って文字を書いて会話をしてはいるけれども、

「今は家族やスタッフとは何とか意思疎通できるようになってきました」

と、記しています。

 

その声は『特殊な音質』で『雑音に弱い』ようなんですが、静かな場所であれば、会話が可能とのことなんです。
喉頭摘出者の先輩によって行われる食道発声のレッスンはネットや本とは違って分かりやすかったそうで、ものを「教える」立場から、『教わる』立場に変わって褒められることの素晴らしさを実感したという体験談も語っています。

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食道発声法のコツ

喉頭がんで声帯摘出のつんく♂の声が復活!?食道発声法と人口音声への期待とは

つんく♂の報道で知られるようになった『食道発声法』ですが、医学的な見地からどのような方法なのでしょうか。

足利赤十字病院リハビリテーション科部長の馬場尊先生は、次のように説明しています。

「喉頭の悪性腫瘍などの治療のために、喉頭全摘術を行うことがあります。喉頭には声帯という音声の元となる音源を作る器官があるので、喉頭を失うとこの音源(喉頭原音)がなくなり、音声喪失の状態になります。この喉頭原音の代わりになる音源を作ることができれば、音声を獲得することができます。これにはいくつかの方法があり、その一つが食道発声法です」

 

【食道発声法】声が出るようになるメカニズム

喉頭摘出をした患者の気管は、永久気管孔を介して、直接、外に開口しています。

元にあった喉仏の下のあたりに、親指大ぐらいの孔を開けて、ここから呼吸をします。

食道は咽頭に完全につなげるので、気管と食道は完全に分離した状態になります。

「食道は咽頭と胃とをつなぐ消化管で、通常は飲み物や食べ物を通すのが役割です。普段は食道に空気が入らないように閉ざされていて、食べ物を通すときだけその緊張をゆるめて、それを通過させます。この仕組みを嚥下といいます」

食道の入り口である『食道入口部』は普段は閉じているが、ここに空気が勢いよく通過すれば振動が生じ、音が発声する。

ラッパを吹くときに、唇を閉鎖させてそこから空気を押し出し、『ブー』という音を出すのと同じです。

「食道入口部から胃に向かって空気を故意に送り込み、その空気をうまくコントロールして、食道入口部方向へ押し出すと、そこが振動して音が出ます。これによって、喉頭原音の代用になり、音声を作ることができるようになるのです。平たく言えば、精緻にコントロールされたゲップが食道発声法です」

普通のゲップの持続時間はコンマ何秒だが、食道発声法の熟達者は3秒間以上、持続した音を出すことができるにです。

「3秒は短いようですが、実は3秒あればゆっくりでも3から4文節が話せるので、日常生活の基本的な会話は問題なくできるようになります」

 

つんく♂さんの食道発声法は、食道の入口にある粘膜を声帯の代わりにするものだと報道されている。

道具を使うよりも、次の点で優れていると指摘されています。

「道具を使用する場合は、必ず片手がふさがってしまいます。笛式や電気喉頭は、道具を頸部に手で固定しなければなりません。シャント式は、話すときに気切孔やシャントチューブの開口部を指でふさぐ必要があります。一方、食道発声は、道具を使用しないので、両手は自由に使用できます。また、外観も自然ですね」

 

食道に空気を送り込む方法って?

こちらについても以下のような見解があります。

「2つあります。一つは『注入』、もう一つは『吸引』です。注入は口腔内の空気を舌の運動で押し入れる方法です。空気のから呑みに近いかもしれませんが、そうではなくで、ノドをほとんど動かさずに舌の動きのみで空気を押し込む方法です。吸引は横隔膜を使用する方法です。呼吸の吸気時には、胸腔内圧は大気圧よりも低下します。食道は胸郭内にあるので、食道内圧も大気圧より低下します。通常は食道入口部の括約筋が緊張しているので、食道内に空気が入ることがありません。しかし、上手く練習をすると、この陰圧を利用して空気を食道内に送ることができるようになるのです」

ポイントは大きく吸気したときに、舌で空気を注入(押し込む)ことで、吸引と注入をうまく融合させること。いずれにしても十分な練習が必要になる。

 

最も難しい音は『ハ』

実際に食道発声法のリハビリのスケジュールは、次のようになります。

「通常は術後4週ぐらいです。気管カニューレが抜けたら、食道発声の練習を開始します。まずは呼吸の練習と注入吸引の練習。その後、母音『ア』の発声の練習をします。この『ア』が出せるのに普通で1カ月ぐらいかかります。それから全ての母音の練習、長母音の練習にうつり、強母音、これらの組み合わせ練習をします。母音が自由に出せるようになったら50音に移る。半母音、濁音、半濁音、無声子音、鼻音、弾音、拗音など、徐々に難易度を上げます。発語明瞭度が50%に達したら、2音節以上の練習を開始。ちなみに最も難しい音は『ハ』行です」

さらに空気を吸引・注入(注気)する時間と空気を出す(吐気)の時間も重要だといいます。

 

「練習初期にでは、注気:吐気=3:1ぐらいで注気の時間が長いのですが、会話練習に移るまでには、1:3ぐらいに注気は短く吐気は長くなっているのが求められます。複数音節の練習は二重母音からはじまり、2音節、3音節、4音節、5音節までできるようにします。これで『こんにちは』『ありがとう』などの挨拶語がようやく可能になります」

 

挨拶後ができるようになると、撥音、促音、長音を練習。

さらに平易な文(絵本)の朗読練習を行い、さまざまな組み合わせで、発声が安定したら、基礎会話練習に移行するんだそうです。

 

「このあとは、より複雑な内容や情景表現を含んだ文章の朗読、俳句、短歌の朗読を通じて、アクセントの練習や抑揚をつける練習をします。さらに歌唱も取り入れます。通常、簡単な会話が可能になるのは、非常に早い人で1カ月、遅い人で6カ月、普通は3カ月程度です。自主訓練は毎日行いますが、訓練室や教室での練習は1回毎週、1時間ぐらいですね」

さらに口腔や舌を鍛えるリハビリも、発声法に役に立つとのこと。

 

「リハビリではありませんが、歯の状態を整えることも明瞭度を上げるために重要です。食道発声法は音声を再建する手段ですが、その目的はコミュニケーションです。より有効なコミュニケーションがとれるような代償的手段を考えることが大切です」

ただし長い複雑な文章や、声質を変えた表現には限界があるんです。

 

「身振り、手振り、表情を豊かにすることが大切です。両手が使用できることを最大限に利用したり、女性なら、女性らしい言い回しを工夫するなどで、対処してもらっていますね」

食道発声法は、諸外国に比べ、日本で広く行われているようです。

各都道府県に喉頭摘出者のボランティア団体があり、喉頭摘出者が食道発声の指導教室(銀鈴会や、阪喉会など)を開催することもあります。

各団体の献身的な協力で支えられていることも、リハビリを支える大きな力となっていることは間違いないようです。

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失った自分の声を取り戻す~人口音声ソフトがすごい~

喉頭がんで声帯摘出のつんく♂の声が復活!?食道発声法と人口音声への期待とは

喉頭がんと同様、全身の筋肉機能が衰えて最後には呼吸も止まってしまう難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)でも自分の声を失ってしまう。コミニュケーションの方法としては、患者の眼球の動きと文字盤を使ってコミニュケーションをとる方法などがある。

しかし、失われた声は、本当に戻らないのでしょうか?

 

日本では、喉頭がんなどが原因で年間約5000人の患者が声を失っていいるという現状があります。
この失われた声に代わるものとして、『人工音声』による会話ソフトが普及しています。

これを使えばコミニュケーションはできるものの、声を失った当事者にとってロボットのような人間味のない人口音声を耳にすることは精神的にショックな体験です。

 

ティー・フォー・ティー株式会社(本社:東京都杉並区、 代表取締役:杉田泰輔)は、 兵庫医科大学歯科口腔外科講座と共同で、喉頭がん等によって声を失った患者さん向けの会話支援用iPadアプリを研究開発。市販用アプリ「My Voice App(マイ・ボイス・アップ)しゃべるん」として 発売開始を予定していたそうです。

 

このアプリは、音声合成機能ではなく本人の肉声を使用し、インターネットに接続されていなくても、端末を持っていれば、いつでも、どこでも利用できるようです。

予定価格は、3000円(税別)。

従来の音声提供サービスと比較すると画期的な価格ではないでしょうか。

 

ALS(筋萎縮性側索硬化症)などにも

 

ティー・フォー・ティー社以外にも、声を失った人たちのために、肉声を復活させるプロジェクトがある。

そのひとつが国立情報学研究所が進める『日本語ボイスバンクプロジェクト』。

こちらは主に、全身の筋肉機能が衰えて自分の声を失ない、最後には呼吸も止まってしまう、難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)などの疾患を対象にしている。

このプロジェクトも自分の肉声を元気なときに録音しておき、この蓄積された音声データをもとに文章をつくりコミニュケーションできるようにするものです。

 

人工音声が単調なリズムで、『コンニチハ、オゲンキデスカ?』と話したとしても、“その人らしさ”はなかなか伝わりづらい。

話している方にも違和感が生じ自分としてのアイデンティティが揺らぐものです。

私たちは、人間としてコミニュケーションをとりたいと望み、そのためには“その人らしさ”が必要であり、それは容姿、表情、肉声などさまざまな要素の集合体です。

ひとつでも欠けてしまうと、その人らしくなくなってしまう…

 

誰もが自分の本当の声でコミニュケーションをしたいのは当たり前です。

患者本人の肉声を再現して、他者とのコミニュケーションをつくっていくこうした動きは、IT技術によって可能になってきました。

 

声帯摘出から2年

喉頭がんで声帯摘出のつんく♂の声が復活!?食道発声法と人口音声への期待とは

喉頭ガンによる声帯摘出から2年、つんく♂は声を取り戻していました。

つんく♂さんの他、治らないB型肝炎とともに生きる『石川ひとみ』さん、試合中の反則行為で失明した『中井祐樹』さんら8名は、病によって何かを発見し新しい人生を手に入れた人々です。

つんく♂さんは、手記の中で、自身を診てくれる医師を過信し、セカンドオピニオンを『診てくれている医師に失礼』だと考えもせずにいたと反省する。

治療中には『寛解』と言われて他の病院で検査したら、ガンが消えていなかった、ということもあった。

だから、自身の医師を気遣いつつも、一人の医師だけでなく、セカンドオピニオンをもらう大切さを強調していたそうなんです。

 

そして声帯全摘出に至ったつんく♂さんだが、今でも、

『もし、いろんな場面で別の選択をしていたら、今はまだ違う結果があったのかなぁ』

と、考えてしまうようです。ただ、

『声帯を失った今、不幸せかというと、決してそうでない』

とも、つんく♂さんは記しています。

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まとめ

喉頭がんで声帯摘出のつんく♂の声が復活!?食道発声法と人口音声への期待とは

以前の声の出ない時など、つんく♂さんのメッセージは誰かがが代読していました。

しかし、それはどれほど自身の肉声でのメッセージを望んでいたかは容易に想像できます。

つんく♂さんは歌手であり、声を失う前の肉声の録音データが大量にある。

現代のITシステムで再び、私たちの前に言葉を発して欲しいです。