がん患者が安心して暮らせる社会を目指す為に『がん対策基本法』の改正案が成立しました。
2006年の『がん対策基本法』が施行されて以来10年が経過…
その間に、患者や家族らを取り巻く状況は大きく変化してきたんです。
『がん対策基本法』が施行されて、患者達のがんからの生還率は大きく改善しました。
しかし、がん患者の社会生活に支障をきたすような事態が起こるようになってしまったんです。
下記のような問題の解決の為に、『がん対策基本法』の改正が成立・施行された訳です。
- がん患者が安心して暮らせる社会環境。
- がんになっても働ける。
- がんという病気に対する偏見をなくすための社会教育。
- 希少がん・難治性がんについての研究を促進。
- がん患者への『こころの支援』を行う。
しかし、改正された後…
現在に至っても、患者さん・患者の家族への対応にはまだまだ問題があるんです。
日々苦しむ患者の不安軽減につながる本物の支援に至らないのは、なぜなんでしょう?
患者さん達が充分な医療や社会生活がおくれる為には、今後どうすればいいのか?
それを一緒に考えてみませんか?
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『がん対策基本法』の改正に至った経緯

出典:http://farm3.static.flickr.com
2006年…
日本のがん患者が、充分な医療を受けられるように議会は『がん対策基本法』を施行。
施行された『がん対策基本法』にもとづいて国・各都道府県は、がん患者への治療環境を整えました。
この基本法の施行から10年…
おかげで、がんの医療は飛躍的に進んで治療後も社会で活躍できる人が増えてきたんですね。
まずは、この『がん対策基本法』の復習をしましょう。
『がん対策基本法』
主な内容:
- 全国どこでも同じレベルの医療が受けられる環境整備。
- 政府が総合的ながん対策として『がん対策推進基本計画』を策定する。
- 策定された『がん対策推進基本計画』に基づいて、各都道府県のがん対策推進計画を進める。
この基本法のおかげで、日本全国どこでも同じレベルの医療が受けられる環境が整えられました。
しかし、治療後も社会で活躍できる人が増えてきた一方で…
通院・治療のため退職を余儀なくされるケースなど、社会生活に大きく支障をきたす事態が起きてきました。
こうしたことから…
議員立法として改正案が提出・議論されて、昨年末に『がん対策基本法』の改正法案が成立した訳なんです。
『がん対策基本法』の改正案
基本理念の概要:
- がん患者が尊厳を保持しながら安心して暮らすことのできる社会の構築を目指すことを掲げる。
- がん患者への国民の理解が深まるようにする。
主に追加された内容:
- 企業側事業主の責務:働く人が、がんになっても雇用を継続できるよう配慮すること。
- 国・地方公共団体の責務:事業主に対してがん患者の就労に関する啓発・知識の普及へ必要な施策。
- 小児がん患者らの学業と治療の両立に必要な環境整備。
- 症例が少ない希少がんや難治性がんの研究促進。
- がん検診の実態把握。
- がんに関する教育の推進:がんに関する知識やがん患者への理解を深める。
- 民間団体が行うがん患者の支援活動・がん患者の団体の活動等を支援するため 国や地方公共団体が必要な施策を講じること。
こうして、がん患者が安心して暮らすことのできる社会への環境整備を盛り込んだ訳なんです。
成立した改正法では…
がん患者が尊厳を保持できる事・安心して暮らせる事を目標に、国民の理解を深める事を目指しています。
そして、各市町村のがん患者への支援・サポートの今の実態はどうなんでしょうね?
『がん対策基本法』の改正後、どれだけ整備されているんでしょうか?
『がん対策基本法』が改正されても…残る不安

出典:http://www.gatag.net
がん患者支援の流れとしては…
『がん患者の療養生活の質の維持向上』・『がん医療に関する情報の収集・提供体制の整備等』が目的です。
そして、具体策は地方自治体(都道府県、政令市)に委ねられます。
各地方自治体は、『がん対策推進計画アクションプラン』を策定・実行している訳なんです。
各市町村の具体的な対策:
2006年の『がん対策基本法』の施行時においては…
がん医療の『均てん化』を目的として、全国の都道府県に『がん診療拠点病院』が認定されました。
※『均てん化』:全国の都道府県、どこでも同じレベルの医療が受けられるようにする事。
そして『がん対策基本法』の改正後、『がん診療拠点病院』に指定されたがん診療拠点病院では、
新たに、行政からの補助金(税金投入)を受けて『がん相談支援センター』を開設しました。
『がん相談支援センター』とは?
- がん患者への『こころの支援』のためのがん患者会とのパートナーシップ』が目的。
- 通常の医療サービスに含まれない『こころの支援』を行う。
- がん専門相談員としての研修を受けたスタッフが、がんの治療や療養生活全般の質問や相談を受ける。
- がん相談支援センターとがん患者会が連携が稼働・運営して、がん患者の支援をおこなう。
※がん患者会:同じ病気や症状、障害など何らかの共通する患者体験を持つ人達が集まり、自主的に運営する会。
上記の書面通りに機能しているとすれば、がん患者にとって本当に心強い味方ですね。
しかし…
書面通りに整備・機能しているとは、まだまだ言えないようです。
しかし現状は、拠点病院のがん相談支援センターの多くは経費・人材・ノウハウが乏しい状況なんです。
がん相談支援センターの『こころの支援』対応は、がん患者会との連携が不可欠です。
がん患者会の組織は団体・NPOとして運営されおり、活動費は十分とは言えません。
その結果、会員の自費によるボランティアに依存する面が強いんです。
がん患者会の運用資金:
- 会員制による年会費
- 寄付金や助成金
なんとも、厳しい家計状態ですね。
ある県では…
がん診療拠点病院あたりの補助金額が、当初年間1500万円からほぼ半減しているそうです。
それによりさらに、がん患者会のボランティアに頼る傾向になっているんです。
担い手となる患者会に直接、経済的援助をしているがん診療拠点病院は少数に過ぎないのが実情です。
では、がん患者会が担っている『こころの支援』の役目はどんなものでしょう?
がん患者会の担っている役目:
- 病院内に、開設されている『患者サロン』内での対応。
- 病院外での、先輩患者による仲間(ピア)のためのサポート:ピア・サポート。
病院内で運営される患者会と、病院から離れて地域社会の中で活動する患者会の2つの形があります。
いずれも、会員のボランティアに依存する面が非常に強いんです。
貢献しているがん患者会・先輩患者(ピア)の負担は、ほとんど軽減されていないのが現状なんです。
がん患者会活動における問題点:
- 患者サロン活動に関する会議には交通費が出ますが、それ以外は自費での活動。
- 先輩患者によるピア・サポート活動も、医療への貢献というボランティア精神に依存しているのが現実。
- 市町村行政の医療機関まかせにしている姿勢。
このような現状に関わらず、がん患者会との連携・パートナーシップ構築が、
法的にも義務づけられているため、患者会の病院への協力の期待度はさらに高まる一方なんです。
本格的な『こころの支援』を実践するには、充分な経費・人材・ノウハウは絶対に必要です。
さらに各市町村の担当者が、本当に『がん対策基本法』の改正内容について理解しているのか?
市町村は、『がん対策推進計画アクションプラン』を策定した後は…
指定した医療機関にお任せ状態になっていないのか?
そんな疑問も浮上しているようです。
この状態では…
がん患者に対する『こころの支援』の役目を十分に果す事はまだまだ難しいと言っても過言ではありませんね。
ここで、具体的に、『ピア・サポート』がどのような形で行われているか紹介しておきましょう。
『ピア・サポート』の実例:
がん患者の『こころの支援(がん患者の自立支援)』には2つある事は先に述べましたね。
- 『がん患者の集まる場』:医療機関内での患者サロン。
- 『地域社会の中(医療機関の外)での実践』:患者会によって担われる「ピア・サポート」。
この両者がうまく連動・連携してはじめて、効果的ながん患者の『こころの支援』が可能になるんです。
主な活動:
- 市町村におかれている市民センターや生涯学習センターなどでの、『こころの支援プログラム』の実施。
- 自然豊かな遠隔地で滞在型プログラムの実施など。
こうした地域社会に根づいた、患者サポートシステムの充実が患者・患者の家族から求められています。
地域社会(日常生活)の中で悩む多くのがん患者に、幅広く支援プログラムが提供されているケースもあります。
これは、
医療機関内の患者サロンに出かけるよりもずっとハードルが低いので、がん患者さんも参加しやすいでしょうね。
ある法人ピアサポートの実例:
遠隔地で実践する滞在型プログラムで、特徴としては…
- 参加者のこころのケアに効果が高い。
- 自然に触れることで気持ちが癒される効果が期待できる。
- 集中的に学べる。
がん患者会の献身的な努力には、頭がさがりますね!
今後のがん患者支援の進むべき方向性は?

出典:https://healthheadline.net
がん患者や家族が、病気のことを打ち明けたり・経済的なことを相談したりするのは難しいものです。
病院内に開設されている『がん相談支援センター』は…
院内・院外問わずに誰でも相談可能である事も、あまり知られていないようですね。
もっと世間に知ってもらえるように…
日本中に開設された『がん相談支援センター』は、認知度をあげる努力をしています。
それらの努力も、医療機関にお任せ状態になっていては進展が遅いのもうなずけます。
さらに、がん患者会の『ボランティア精神を利用する』がん対策は、本末転倒であると言えるでしょう!
行政・がん診療拠点病院は…
現状、逆に患者側の金銭やマンパワーの持ち出しになっている事を理解してほしいものです。
今後のがん患者支援に望む方向性:
- 医療側の都合でなく、もう少し患者側の視点に立ったピア・サポートと支援体制の確立。
- 市町村単位での地道な活動・ピア・サポートとその支援体制の確立。
- 市町村の担当者の理解を深めた上での、市町村主導の支援体制の確立。
- 病院内で行われる患者支援を有機的に連携していく仕組みづくり。
これらの仕組みが構築できれば…
わが国のがん患者支援も、がん患者が望むものになっていくのではないでしょうか?
まとめ

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『がん対策基本法』の改正により、新たに日本全国でのがん患者支援が展開されています。
しかし、現状の…
患者会スタッフがよかれと思って、『犠牲的精神で社会貢献』している現在の形では…
おそらく、長期間にわたる継続は困難でしょうね。
がん患者支援が、患者の無償ボランティア精神に依存する形はやはり健常とはいえませんよね。
実は私の母も、数年前にがんで亡くなっています。
この『がん対策基本法』の改正がもっと早く行われていたら…
母も、もっと安心してがん治療・尊厳ある社会生活が営めていたのかも知れません。
行政・がん診療拠点病院の方々、どうか迅速な体制の整備をお願いします!
がん患者会の負担を、軽減してあげてくださいね。
もしあなたが、がん患者になってしまったら・あなたの家族が患者になってしまったら…
一人で悩むよりも、『がん相談支援センター』の支援を受けていく事をお勧めします。
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