誰もが経験のある下痢。
原因やメカニズムについて気になったことはありませんか?
通勤途中や仕事中に突然腹痛と共に下痢になってしまって困った、という経験はないでしょうか。
下痢は困ったものですが、実は身体にとって大事な反応です。
嫌がられる現象の下痢ですが、なぜ起こってしまうのか、今回はその原因やメカニズムについて説明します。
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下痢ってそもそもどんな状態?

食事をすると、胃や十二指腸では、食べ物を細かくする消化が行われます。
口からは飲み水や食事に含まれる水分合わせて3L、それを消化するための胃液や胆汁などの消化液6Lと合わせると、9Lにもなる水分が毎日腸に流れ込みます。
小腸では、食べ物の栄養と、体内に流れ込む9Lの水のうち7L が吸収されます。
大腸に届く頃には残り2Lとなっていますが、それでもまだ便とはいえない、水のような状態です。
大腸で残りの2Lの水分も吸収され、水分の99%が吸収された結果、便が形作られ排出されます。
健康な便は、水分が60%から70%ほどです。
これより水分が増えると便が柔らかくなり軟便、『水分が90%を超えると下痢』となります。
下痢を起こすと便に含まれる水分が多いだけではなく、トイレに行く回数が増えます。
下痢の種類について

急性の下痢
1日に数回から数10回にわたって便意をもよおすものまでありますが、2週間以内で治まるものがほとんどです。
また、急性の下痢は、
- 食中毒などによる感染性
- 暴飲暴食などによる非感染性
のものに分かれます。
慢性下痢
1日に数回程度でも3週間以上続くものとなり、機能性の下痢とそれ以外に分けられます。
機能性の下痢は生活習慣やストレスが原因となって起こるもので、過敏性腸症候群の場合もあります。
4種の下痢とメカニズムは?

下痢にはいくつか病型があり、それぞれ起こるメカニズムが違ってきます。
またいくつかの病型が重なる場合もあります。
浸透圧性下痢
腸では食べた物の水分を吸収して固形化する働きがあります。
ですが浸透圧(水分を取り込もうとする力)が高い食べ物をたくさん摂ると水分をうまく吸収できず、便が水分を多く含んだ状態で排出されるため下痢になります。
分泌性下痢
腸管からは水分を吸収するだけではなく、分泌物も出されています。
毒素が身体に入ると、この分泌物が増えてしまうことで下痢になります。
滲出性下痢
腸の中に炎症が起こる原因があると、腸管粘膜から血液や血漿、血清蛋白などの浸出液が出されます。
これによって腸の中の水分が多くなるため、下痢になります。
腸管運動異常の下痢
便は腸の蠕動運動によって排出されます。
この蠕動運動が何らかの原因で活発になった場合、水分が吸収されないまま排出されてしまい、下痢になります。
水下痢になる原因

理想的な便の水分量は70~80%で、適度な粘度をもっています。
下痢の症状である軟便になると、その水分量は80〜90%となり、90%を越えた便は形をとどめず、下痢の中で最も水分量が多い水下痢と呼ばれます。
下痢は腸の運動が過剰になることで消化物が早く通過してしまい、腸内で水分を十分に吸収できなくなってしまいます。
その水分が便と混ざり合うことで、便がゆるくなり下痢の症状が起こります。
水下痢になる原因として考えられるのは、
- ウイルスや細菌
- 食中毒や食あたりなど
による急性の胃腸炎です。
体内での防御機能が働き、異物と判断したものを早く外に出そうとするため、一般的な下痢よりも水っぽくなる場合があります。
この場合は、下痢だけでなく『ひどい腹痛や吐き気などを伴うことが多いことも特徴』で、ウイルス性のものは、ノロウイルスやロタウイルスなどが挙げられます。
そして、もうひとつの原因は、ストレスなどによる過敏性腸症候群によるものです。
普段から腸がデリケートな方が、大きな緊張や不安を感じることで腸の動きが異常に活性化し、水下痢を引き起こすケースが考えられます。
【下痢】12の原因がガチで怖い…

食べ物で起きる下痢(急性で非感染性)
<暴飲暴食をした時>
水分を吸収するのが追いつかないため
<アレルギーがあるものを食べた時>
身体から早くアレルギーの元を追い出そうとするため
<牛乳を飲んだ時>
牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素が少ない人(乳糖不耐症)が牛乳を飲むと、乳糖が分解されず腸内に蓄積します。
乳糖は水分を引き寄せてしまうため、下痢の原因となります。
<人工甘味料を含む甘い物をたくさん食べた時>
水分を吸収しにくくし、腸に水分を溜めやすいため
<アルコールをたくさん飲んだ時>
水分と電解質(ナトリウムやカリウム、クロールなど)が増え、脂肪や糖が分解されたり吸収されにくくなるため
<薬剤によるもの>
急性の場合と1~2か月後に起きる場合とがあります。
長期間の抗生剤投与は善玉菌も殺してしまい、多くの抗生剤に耐性を持った菌により下痢を起こす偽膜性腸炎を引き起こすことがあります。
急性胃腸炎などで起こる下痢(急性で感染性)
<腸炎ビブリオ>
魚介類の刺身や寿司などが原因で、食後4~96時間に激しい下痢や腹痛があります。血便がみられる事もあります。
<サルモネラ>
卵とその加工品や、食肉(特に内蔵類)を生で食べることが原因となります。
食後半日から2日間程度で腹痛、下痢、発熱、嘔吐がみられます。
調理する人や調理器具から他の食品にサルモネラがつくことで、珍味類など各種食品が原因となることもあります。
<黄色ブドウ球菌>
おにぎりやいなり寿司が原因になることが多いです。食後1~6時間で下痢、腹痛、嘔吐が起こります。
手に傷がある場合には菌が潜んでいることがあり、注意が必要です。
加熱などの処理を行うと菌は死滅しますが、食中毒の原因となる毒素は分解されません。
<カンピロバクター>
加熱処理されていない肉などが原因になります。
食後2~7日で下痢、発熱、嘔吐、腹痛、筋肉痛などが起こります。
運動神経が障害され全身の力が入らなくなるギランバレー症候群の先行感染の原因として多いことが知られています。
<腸管出血性大腸菌O-157 >
加熱処理されていない肉や野菜などで起きやすく、食後12~60時間で激しい下痢、腹痛と下血などがみられ、死亡する例もあります。
<ボツリヌス菌>
長期保存する食品が原因となります。
食後8~36時間で下痢、嘔吐とともに麻痺などの神経症状が起こり死亡する例もあります。
<セレウス菌>
あらゆる食品が原因となり、食後8~16時間で下痢や腹痛が起きます。
<コレラ>
生の食材などが原因となり、食後2~3日で激しい下痢と嘔吐が起きます。
大量の下痢便が出ることで脱水症状を起こし死亡する例もあります。
<ノロウイルス>
二枚貝を生や加熱不足の状態で食べた事が原因となり、食後1~2日で激しい下痢や嘔吐、腹痛などが起こります。
抵抗力の弱い人では死亡することがあります。
<ロタウイルス>
乳幼児がいる家庭で注意してほしいのが、ロタウイルスです。
ウイルスに汚染された食品や、感染者の便などに触れた手を介しての接触感染が主な感染経路です。
2~4日の潜伏期間の後、下痢(激しい場合は白色に)と嘔吐が繰り返し起こります。
病気による下痢(慢性)
<慢性膵炎>
膵臓が委縮していく進行性の難病です。脂肪を分解する消化液が少なくなるため、脂肪分の多い下痢が続きます。
<過敏性腸症候群>
慢性的に便秘や下痢を繰り返す事が多いのですが、病院で検査を受けても異常が見つからないことがあります。
ストレスが大きな原因となっている事が多く、心理療法などの治療がとられます。
<炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病など)>
原因不明の難病です。下痢や粘液性の血便、下血、腹痛などがみられます。
重症になるほど排便回数が多くなります。
<大腸がん>
初期の段階では、便秘と下痢を繰り返したり、便に血が混じるなどの症状が出ることがあります。
胃痛を伴う下痢の対処法

急性胃炎が原因になっている場合は、胃の状態を整えることが先決です。
炎症によって弱った胃を休ませるために『半日~1日は食事を控えることが望ましい』です。
湯冷ましや番茶など胃に負担のかからない飲み物を摂りつつ様子をみましょう。
だいたい2~3日で痛みが治まる場合が多く、その間の食事は、おかゆやうどん、野菜スープなど消化の良いものを食べ、少しずつ胃を慣らしていきましょう。
味の濃いものや脂肪分の多いものは控えて下さい。
また、身体の消化機能を高めるためには、『腸内環境をケアすることも大切』です。
乳酸菌やビフィズス菌をはじめとする善玉菌を摂り入れて、善玉菌が優勢な環境に整えてあげましょう。
また、飲み過ぎや食べ過ぎなど痛みの原因がわかっている場合は、胃腸薬や下痢止めを活用して症状を緩和させてもいいですが、ウイルスや細菌による痛みの時は話が別です。
この場合は、菌を排出しようとるす体の防御反応として下痢が起きているため、むやみに薬で止めないようにしましょう。
また、胃痛が激しいとき、2~3日安静にしていても症状が変わらないときは、別の病気が原因になっていることもあります。
『早めに医療機関を受診しましょう。』
まとめ

今回は『下痢の原因とメカニズムについて』紹介しました。
下痢と言っても原因は様々です。
生肉の摂取は控えましょう。
受診時には海外旅行、変わったものを食べたか否か、薬の服用歴が重要になります。
こうした原因になりそうなものがない場合、何かの病気が潜んでいる場合もあります。
下痢が治まらない時、特に高齢者や乳幼児は、早めに病院へ行くようにしましょう。
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