肥満はさまざまな疾患を引き起こすリスクが高いとされており、肥満度を示すBMI指数(体重[kg]÷身長[m]÷身長[m])は重要な健康指標であると考えられてきました。
あなたやあなたの周囲で肥満の方は決して安全・安心とは言えませんよね。
いかにも早死にのリスクがついて回りそうです。
実際、米国では近年、減量(BMI値の低下)に成功した従業員に対して保険料を減額するプログラムを提供する企業が増えており、こうした試みに参加しない従業員にペナルティを科す企業もみられているのです。
米国雇用機会均等委員会(EEOC)は、従業員が目標達成に失敗したら、雇用者は保険料の30%までを従業員に課してもよいとする規定を提案しているといいます。
肥満は病気のリスクだけではなく、早死にのリスクも高くなります。
しかし、このたび発表された米国の調査結果で、肥満者(BMIが25以上)のうち約半数が代謝的には健康であり、一方で、正常な体重の人の約3割が、代謝を示す数値に問題がみられたことが示されました(『International Journal of Obesity』オンライン版に2月4日掲載)。
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肥満者が健康なのか検証した結果が意外

この研究は、2005~2012年に米政府の全米健康栄養調査(NHANES)に参加した米国成人約4万人のデータを解析したものです。
米カリフォルニア大学サンタバーバラ校のJeffrey Hunger氏らの研究チームによる解析の結果から、
- 肥満者(BMI分類で肥満度Ⅰ)の29%
- 重度肥満者(BMI分類で肥満度Ⅱ~Ⅲ)の16%
が『代謝的に健康』であることが示されました。
(ここでいう『代謝的に健康』とは、高血圧や脂質異常症、高血糖、炎症マーカーの上昇といった2型糖尿病や心疾患のリスク因子を保有していないことを指す)
一方で、正常体重者の約3割が代謝的に不健康であることも判明しました。
標準的なBMI分類のみによって心血管代謝の健康状態を誤って判断されている米国人は7500万人近くに上ると推測しており、今回の調査結果はこうした状況に一石を投じるのではないかとの期待を示しているのです。
加えて、『体重ばかりを気にしすぎるのは個人の幸福感を損なうことにつながる。BMIよりも健康的な食生活と定期的な運動を心がけるように』と助言しています。
やっぱり肥満は危険!?

ただし、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)循環器内科教授によると、やはり体重という指標は重要であり『肥満であるが代謝的には健康』という考え方には問題があることを示唆する研究結果もあるというのです。
例えば、2015年に報告された100万人以上のスウェーデン人を対象に長期観察を行った研究では、肥満だが健康とされた男性は、不健康で痩せている男性よりも早死にするリスクが30%高くなりました。
また、英国の成人2500人を20年間追跡した研究では、ベースライン時に肥満だが健康とされた人の半数以上が、5年以内に高血圧や糖尿病などを発症していました。
『一時点だけ見れば、肥満であるが心血管代謝的に健康であるという状態はありうるが、肥満は年月の経過とともに健康を損なうリスクファクターとなる』と述べています。
こうした議論で注目すべきは、むしろ『体重が正常でも不健康』な状態のほうかもしれません。
BMIは体脂肪率を反映しないため、BMIが低くても脂肪が多い、いわゆる『隠れ肥満』は存在します。
なかでも、内臓脂肪が蓄積したメタボリックシンドロームは、動脈硬化を進行させやすく、脳卒中や心筋梗塞などを引きおこす可能性もあるのです(メタボリックシンドロームの診断には、ウエスト周囲径が用いられる)。
つまり『体重を気にしなくていい』のではなく、『体重だけを気にしていてはいけない』のです。
メタボリック症候群とは

最近、内臓脂肪と生活習慣病に関する話題をよく聞きますよね。
肥満、高脂血症、高血糖症(糖尿病)、高血圧などがあります。
これらが複合した状態を『メタボリック症候群』といい、その病気の原因は内臓脂肪型肥満、脂質代謝異常、糖代謝異常、血圧異常などが考えられるのです。
メタボリック(Metabolic)は『代謝』を意味し、シンドローム(Syndrome)は『症候群』を意味するのです。
直訳すると『代謝異常症候群』という意味ですね。
メタボリック症候群診断基準

メタボリック症候群の診断基準が2005年4月に作られています。
おへその高さの腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上の場合、この条件に下の3つの症状のうち2つ以上該当した場合、メタボリック症候群と診断されるのです。
1.中性脂肪150mg/dl以上、HDLコレステロール40mg/dl未満のいずれかまたは両方
2.血圧が上で130mmHg以上、下で85mmHg以上のいずれかまたは両方
3.空腹時血糖が110mg/dl以上
(日本肥満学会、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会など8学会が合同で公表した『メタボリック症候群の診断基準』より)
メタボリック症候群の予防と改善

予防と改善の基本は適正な食事と無理なく続けられる運動ですね。
必要以上に食べてませんか?
『まんぷく感を得るため』や『食べないと体に悪いのではないか』と思うことによってバランスの悪く、カロリーの高い食事をすることが習慣になっていませんか?
間食に清涼飲料や缶コーヒーを夜食にスナック菓子などを食べていませんか?
これらの習慣があると1日に必要なエネルギー量をオーバーしている上に食物繊維やビタミン・ミネラル・カルシウムなどが不足している可能性があるのです。
まずは1日に必要なカロリー量を知っておくべきですね。
食べる量を見直す前に
食事療法で摂取カロリーや栄養素のバランスを考えて食べることはもちろん大切ですが、それ以前に見直した方がよい生活習慣があるのです。
それはよく噛んで食べるという基本的なことです。
よく噛むことにより食べ物が小さくなり、唾液もよく混ざるので消化吸収がよくなり、また食事時間も長くなるので、満腹中枢が満たされやすくなるのです。
よく噛むには一口で口に入れる量を少なくしてみると食べ物が口の中でよく動くので噛みやすいでしょう。
1日、30分程度の有酸素運動がおすすめです

有酸素運動することで中性脂肪を減少させることができます。
激しい運動でなく、軽く汗をかく程度の継続できる運動がよいでしょう。
どんな運動がよいの?
手軽なのがウォーキングです。
歩く時間が20分を過ぎると脂質が使われ始めるといわれていますよね。
ウォーキングがよいと分かっていても習慣になるまで続かない人もいるのではないでしょうか。
近所に適当なコースがない場合もあるのでは?
そんな人は室内でできる運動をしてみてはいかがでしょう。
たとえば体操、ラジオ体操でもよいですしテレビでやってる体操でもよいですね。
ラジオ体操ってきちんとすると結構よい運動になるんですよ。
まとめ

肥満による早死にのリスクが高まったり、メタボリックシンドロームの基準にひっかかったりという可能性はありますよね。
普段からできる簡単なことで予防していきましょう。
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