おせち料理・お餅の食べ過ぎ・お酒の飲み過ぎ・正月ボケ…
この時期は、ついつい不摂生しがちです。
胃腸はタフな臓器ですが一度、慢性的なトラブルなどを抱えると、なかなか復調しませんよね。
- 『胃炎』
- 『胃潰瘍』
- 『胃癌』
これらは、日本人に多い疾病です。
その中でも、『胃癌』はちょっと勘弁願いたい疾病です。
『胃癌』に罹る日本人は『肺癌』についで多く、およそ13万人だそうです。
その原因は多岐に及びます。
- ヘリコバクター・ピロリ菌による炎症
- 塩分過剰
- 食物繊維不足
- 飲酒過剰
- 喫煙
- ストレス
まさしく、現代病のひとつですね。
その中でも、『ヘリコバクター・ピロリ菌』による炎症が胃癌の主な原因であると言われています。
このピロリ菌の感染は、特に高齢者に多い事がわかっています。
今回はこの『ヘリコバクター・ピロリ菌』にスポットを当てて、現状とその対応についてご紹介します。
お好きなところからどうぞ
『ヘリコバクター・ピロリ菌』って何者?

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簡単にいえば、ピロリ菌は胃の粘膜に生息する細菌です。
胃には強い酸(胃酸)があるため、昔から細菌はいないと考えられていました。
しかし、ピロリ菌の発見以来…
さまざまな研究から、ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍などの胃の病気に深く関っていることが明らかにされたんです。
まずは、『ヘリコバクター・ピロリ菌』について理解をしておきましょうね。
『ヘリコバクター・ピロリ菌』の特徴:
- 本体の長さは4ミクロン(4/1000㎜)。
- 2~3回、ゆるやかに右巻きにねじれている。
- 一方の端には、『べん毛』と呼ばれる細長い『しっぽ』(べん毛)が4~8本ついている。
- くるくるまわしながら活発に動きまわる。
- ピロリ菌はべん毛をスクリューのように回転させながら、らせん状の本体を回転させて移動する。
普通の細菌は、胃の中では生息できません。
胃液には、金属でも溶かしてしまう強い酸(塩酸)が含まれているためなんです。
しかし、ピロリ菌は…
強い酸性の胃の中でも、へっちゃら!
秘密は、ピロリ菌がだしている『ウレアーゼ』という酵素にあります。
この酵素は胃の中の尿素を分解してアンモニアを作りだします。
アンモニアはアルカリ性なので、ピロリ菌のまわりの胃酸が中和されて生息できるのです。
すごいやつですね。
しかも、この細菌はまるで忍者のように胃の中に浸入して何十年も隠れる事ができるんですよ。
ピロリ菌の感染経路:
実は、どのような感染経路であるかはまだはっきりわかっていないんです。
そして最近の研究から、口から入れば感染することは間違いない事がわかってきました。
主な感染経路:
- 水道水から感染:上下水道が十分普及していなかった世代の人に菌感染率が高い。
- 母から子へなどの家庭内感染:感染している大人から小さい子どもへの食べ物の口移しなどによる。
上下水道の完備など生活環境が整備された現代日本では…
生水を飲んでピロリ菌に感染することはないと考えられています。
しかし、上下水道が十分普及していなかった世代の人については、感染率が高いんです。
ピロリ菌は、ほとんどが幼児期に感染すると言われています。
幼児期の胃の中は酸性が弱く、ピロリ菌が生きのびやすいためです。
そして…
幼児期に胃に住み着いたピロリ菌が、大人になってから胃の病気の原因になっていくんです。
また、そのピロリ菌を持った大人が口移しで食べさせる事により、
そのお子さんにもピロリ菌が感染していくと考えられています。
【恐怖】ヘリコバクター・ピロリ菌が胃の病気を発症させる?!

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普通の細菌が口から鼻から体内に侵入しても、胃酸の中に塩酸が存在するため死滅します。
しかし、ヘリコバクター・ピロリ菌は死滅しません。
それどころか、胃の中で存在し続ける事により胃の粘膜に障害を及ぼしてしまうんです!
いったい、どんなメカニズムで障害を及ぼすんでしょうね。
胃の病気を発症させるメカニズム
ピロリ菌は…
『ウレアーゼ』という酵素を分泌し、胃の中にある尿素を分解してアンモニアと二酸化炭素をつくり出します。
この働きをきっかけに、胃の粘膜に障害を及ぼしていくんです。
メカニズム:
- このアンモニアによって胃の粘膜がただれる。
- ピロリ菌を排除しようとする免疫反応が働き、粘膜に炎症が起こる。
- ピロリ菌自体の分泌する毒素のため、胃の上皮細胞内に障害が起こりさらに炎症が悪化。
- 炎症が生じた粘膜には『白血球』が集まり、さらに炎症が悪化して胃の粘膜が傷つけられる。
- このような、ピロリ菌のさまざまな病原因子が相互に働き合って胃の障害を引き起こす。
また、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると…
胃粘膜は白血球やリンパ球による炎症細胞浸潤を引き起こし、白血球は活性酸素を放出するため、
細胞障害を招きやすくなる。
その結果…
- 『胃炎』
- 『胃潰瘍』
- 『十二指腸潰瘍』
- 『胃癌』
と言った疾病に至ります。
本当に、映画で出てくる細菌兵器みたいですね。
そして、それに追い打ちをかけるように…
ピロリ菌を除去しても、『遺伝子異常』によって胃がんの再発リスクが高まる事がわかったんです!
除去しても再発のリスクがあるって本当なの?

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昨年(2016)年12月、国立がん研究センターの牛島俊和分野長らの研究グループは、胃癌の原因となるヘリコバクター・ピロリ菌を除去後も、遺伝子異常によって再発リスクが高まると発表。
胃癌の治療が終わった患者800人を対象に、『メチル化』と呼ばれる遺伝子異常がどのように発生しているのかを調べました。
患者を4グループに分け、5年間にわたって術後の経過を観察・分析したんです。
- 異常が最も少なかったグループの患者の癌再発率:7%
- 異常が最も多かったグループの患者の癌再発率:19%
結果は見ての通り異常が最も多かったグループの患者の癌再発率が、高かったんです。
『メチル化』ってなに?
一度、胃癌にかかった事により…
細胞のDNAが下記の異常を起こします。
『DNAのCpGという配列の部分で、Cに-CH3という分子(メチル基)がつくのがDNAメチル化である。』
端折って言えば、メチル化された遺伝子は使うことができなくなるんです。
もっと、簡単に言えば…
- DNAが壊されてしまう。
- 壊されたDNAもまた、正常なDNAと同様にどんどん増殖される。
- その結果、また細胞の異常を起こす。
- がんの再発のリスクが大きくなる。
結局は、ヘリコバクター・ピロリ菌により、胃の粘膜に影響が及んだ事により、
DNAの異常・破壊にまで至ってしまっているのが現状です。
ヘリコバクター・ピロリ菌と胃癌の関係性は、疫学的にほぼ証明されています。
1994年に世界保健機関(WHO)は、ヘリコバクター・ピロリ菌を有害な発がん物質に指定しています。
では、この悪玉ピロリ菌感染に年齢は関係あるんでしょうか?
日本人のヘリコバクター・ピロリ菌の感染率

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日本人のヘリコバクター・ピロリ菌の感染率はどうなっているでしょう?
20歳までの若年者は1割にも満たないのですが、加齢と共に高まり50歳以上は80%に及んでいるんです!
感染の状況:
- 感染者は、およそ6000万人。
- このうちのおよそ2~3%が胃・十二指腸潰瘍を発症。
- およそ0.4%が胃癌を発症する。
高齢者に感染者が多い原因:
- 主な感染源は井戸水や河川。
- 衛生環境の問題:排便などが混入した井戸水。
- 出身地域の問題:大都市圏ではなく郊外の出身。
上下水道の衛生環境は、時代が下るにしたがって整備されましたが、
その点で高齢者はピロリ菌の感染率(保菌率)が高いのです。
そして大都市ほど上下水道の整備も早く、郊外では遅れて整備されたため出身地域が影響しています。
先に述べた通り、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染の経路等はすべて分かっていません。
国立がん研究センターの牛島分野長らの研究がさらに進めば…
どの段階の除菌治療が、胃癌の再発予防に有効かが解明される日もくるでしょうね。
ヘリコバクター・ピロリ菌は身体から除菌できるの?

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安心してくださいね。
ちゃんと方法はあります!
ピロリ除菌方法:
- 胃酸の分泌をおさえるプロトンポンプ阻害薬(PPI)と2種類の抗生物質を朝夕2回・7日間服用。
- 新しいタイプの胃酸分泌を抑える胃薬(ボノプラザン)と2種類の抗生物質の服用。
1項目の服用の場合は、約7~8割の方が除菌に成功します。
2項目の服用の方法は最近開発されたもので、体質によらず高い除菌の成功率(約90%)です。
上記の方法での注意点があります。
服用上の注意:
- 薬の飲み間違いや飲み忘れなどがあると除菌に失敗する確率が増える。
- 指示されたとおり正しく内服することが大切。
- 正しく服用しないと、抗生物質が効かない細菌(耐性菌)を作ってしまう可能性がある。
- 服用中は、アルコールは禁止!
よくよく、気をつけてくださいね。
薬を正しく服用しても、体質によっては除菌に失敗することがあります。
この場合…
初回と同様に、再度服用を繰り返します。
まずは…
ピロリ菌の専門医に受診して、正しい検査を受けた後に除菌に取りかかってくださいね!
まとめ

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日本人に多い疾病
- 『胃炎』
- 『胃潰瘍』
- 『胃癌』
胃炎や胃潰瘍はまだしも、胃癌はちょっと頂けませんよね。
でも、先に述べたように原因を究明する研究が今も進められています。
今後の研究が進めば.
- DNAのメチル化の異常の検査など、新たな検診方法。
- 新たなピロリ菌の検査・除菌対策。
これらの検診・対策が開発されるでしょう。
そして、新しい検診方法により早期発見できるようになるでしょう!
しかし、今私たちにできる事もちゃんと実行しましょうね。
胃がんの予防は..
- 一にも二にも生活習慣。
- 毎日の食習慣のバランス。
- 過剰なストレスに気をつける。
胃腸に負担をかけない健康的な生活です!
もしも、胃もたれ・吐き気・食欲不振・などの変調があれば、、
迷わずに、胃腸内科などで受診して下さいね。
何事も、早めがよろしいようですね!
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