インフルエンザ治療薬の種類と違い~副作用は大丈夫?タミフル・リレンザ・イナビルなど~

インフルエンザ治療薬違い

インフルエンザ治療薬には、いくつかの種類があります。

タミフル、リレンザ、イナビルなどの名前は聞いたことがあっても、その違いをきちんと理解していますか?

今回は

  1. インフルエンザ治療薬の作用機序
  2. 5種類のインフルエンザ治療薬の特徴
  3. インフルエンザ治療薬の副作用
  4. インフルエンザ治療薬の予防投与について

以上の4点について紹介します。

抗インフルエンザ薬4つの種類と作用機序

インフルエンザ治療薬違い

現在発売されている主な抗インフルエンザ薬には、

  1. タミフル
  2. リレンザ
  3. イナビル
  4. ラピアクタ

の4種類があります。

  1. インフルエンザウイルスはヘマグルチニンと細胞膜表面の糖シアル酸の結合により細胞内に入り込み増殖します。
  2. その後細胞膜まで移動し、シアル酸とヘマグルチニンが再び結合。
  3. 最後にノイラミニダーゼという酵素がそれを切り離して細胞外に出て行く。

といった作用機序があります。

 

そのため、ノイラミニダーゼを阻害することができれば、増殖した細胞が外に出られなくなります。

つまりそれ以上感染が拡大しないことになります。

 

抗インフルエンザ薬がもたらす結果

 

上記の『抗インフルエンザ薬はノイラミニダーゼの働きを邪魔する作用』を持ちます。

その結果ウイルスは細胞表面で死滅します。

作用はあくまで”ウイルスをそれ以上増殖させない”であり、『症状の悪化を防ぐ』というものです。

ウイルス自体を直接死滅させるものではありません。

 

インフルエンザウイルスの量は2、3日でピークに達し、その後は減っていきます。

『48時間以内の服用』とされているのはこのためです。

ウイルスが増えきった状態で抗インフルエンザ薬を服用しても意味が無いことがお分かり頂けると思います。

また、上記とは異なる作用機序を持つアビガン(一般名:ファビピラビル)という薬もあります。

アビガンの作用機序はRNAポリメラーゼ阻害です。RNAポリメラーゼはウイルス増殖時に必須の酵素です。

その酵素を邪魔する作用を持ちます。

 

5種類のインフルエンザ治療薬(抗インフルエンザ薬)

インフルエンザ治療薬違い

1.オセルタミビルリン酸塩(タミフル)

 

タミフルという商品名でお馴染みです。

『A型・B型両方のインフルエンザウイルスの増殖を防ぐ』効果があります。

カプセル剤、小児では散剤による『経口投与』が一般的です。

症状が出始めたら『48時間以内に服用』するのが効果的です。

逆に言うと、症状が出てから48時間を超えた患者が服用しても効果がほとんどありません。

48時間を超えた患者に無駄な処方がされないよう注意が必要になります。

 

2.ザナミビル水和物(リレンザ)

 

こちらはリレンザという商品名でご存知の方が多いと思います。

『A型・B型インフルエンザに効果』があります。

『リレンザは吸入薬』で、専用の吸入器を使って1日2回・5日間にわたって吸入します。

インフルエンザウイルスは呼吸とともに吸い込まれ、気道で増殖するため、粉薬を直接気道に届けることで即座にウイルスの増殖を抑えることができます。

症状を早く緩和するために、最初の1回はできるだけ早く吸入することが大切です。

病院や薬局でリレンザを受け取ったら、できればその場ではじめの1回分を吸入するのがよいでしょう。

リレンザの副作用としては下痢、発疹、吐き気、動悸などが報告されています。

 

3.ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(イナビル)

 

イナビルという商品名で処方されます。

『A型・B型インフルエンザの治療に効果』があり、リレンザと同じ吸入薬です。

イナビルの最大の特徴は、『1回吸入するだけで治療を完結させる点』にあります。

10歳以上は2容器2つを、10歳未満は1容器を吸入するだけで、継続した治療は必要ありません。

ただし、1回の治療でしっかりと薬を吸入する必要があるので、病院で医師や看護師の指導を受けながら吸入するのが安心です。

特に小さなお子さんの場合、保護者の方も注意して見てあげてください。

イナビルでは、下痢、悪心、胃腸炎、蕁麻疹などの副作用が報告されています。

 

4.ペラミビル(ラピアクタ)

 

日本ではラピアクタという商品名です。

『点滴注射薬』のため、カプセルを飲んだり粉薬を吸入したりするのが困難な患者さんにも投与することができます。

300mgを15分以上かけて一度だけ点滴静注します(投与する量は、年齢や症状によって減量します)。

基本的には一度の投与で治療を完結させますが、症状が重い患者さんの場合は1日1回600mgを何日かに分けて投与することもあります。

タミフル同様、発症から48時間以内に服用した場合の有効性が確認されています。

ラピアクタによる副作用では、下痢、白血球減少、嘔吐、蛋白尿などが認められています。

 

5.アマンタジン塩酸塩(シンメトレル)

 

シンメトレルという商品名で販売されています。

インフルエンザウイルスが粒子を構成できなくする働きを持ち、『A型インフルエンザに対してのみ』効果があります。

1日に400~1200mgを経口投与しますが、現在この薬はアメリカでは使用が禁止されています。

というのは、この薬に対して耐性を持つウイルスが発生し始めているからです。

シンメトレルを服用した際に解熱・症状緩和にかかる時間が徐々に延びているという報告があり、日本では現在も使用されることはほとんどありません。

この薬は、現在は主に『パーキンソン病の治療薬』として用いられています。

以上のインフルエンザ薬の特徴をまとめると、以下のようになります。

 

有効な『型』・用法・用量・副作用

 

<商品名 >オセルタミビルリン酸塩 タミフル

<有効な型> A・B

<服用方法・服用量> 経口 1日2回/5日間

<主な副作用>

  • 動悸
  • 血圧低下
  • 蕁麻疹
  • 血便
  • 腹痛など

 

<商品名 >ザナミビル水和物 リレンザ

<有効な型> A・B吸入

<服用方法・服用量>  1日2回/5日間

<主な副作用>

  • 下痢
  • 発疹
  • 吐き気
  • 動悸
  • 呼吸困難など

 

<商品名 >ラニナミビルオクタン酸エステル水和物 イナビル

<有効な型> A・B吸入

<服用方法・服用量>  1回のみ

<主な副作用>

  • 下痢
  • 悪心
  • 胃腸炎
  • 蕁麻疹など

 

<商品名 >ペラミビル ラピアクタ

<有効な型>  A・B

<服用方法・服用量> 点滴

<主な副作用>

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 白血球減少
  • 蛋白尿など

 

<商品名 >アマンタジン塩酸塩 シンメトレル

<有効な型>  Aのみ

<服用方法・服用量> 経口 1日40~120mgを分割投与

<主な副作用>

  •  ショック症状
  • 心不全
  • 肝機能障害など

実は怖いの?抗インフルエンザ薬の副作用

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副作用はいずれも『下痢、悪心(吐き気)、嘔吐などの消化器系』の副作用がメインです。

やはり特に注意が必要なのは『突然興奮したりする異常行動』でしょう。

この異常行動ですが、抗インフルエンザ薬を使用していなくても、解熱剤だけの使用でも現れることがあります。

インフルエンザ自体が引き起こすとも言われています。

 

ただ異常行動は上記抗インフルエンザ薬4剤全てで報告されており、『タミフル』がその中で一番多いです。

そのためタミフルは原則10代には使用しないこととされています。

因果関係ははっきりしないものの、特に小児や未成年は少なくとも2日間は患者を1人にさせないことが重要です。

親御さんはよく監視していて下さい。

 

インフルエンザ治療薬で起こる『異常行動』とは

インフルエンザ治療薬違い

以前、タミフルが異常行動を起こすとして話題になったことがありましたが、厚生労働省医薬品等安全対策調査会は『タミフル服用の有無にかかわらず、異常行動はインフルエンザ自体に伴い発現する場合がある』と結論づけています。

他の薬についても異常行動が見られたとの報告がありますが、インフルエンザ治療薬と異常行動との明確な因果関係が確認された例はありません。

また、単なる解熱剤を服用していただけでも異常行動が見られた例もあります。

 

どんな薬を服用していたとしても、特に小さなお子さんなどの場合は事故を防ぐため、『発症から2日間は患者さんが1人にならないように配慮する』と安心です。

小さなお子さんの場合、できれば熱が下がるまで保護者の方がついてあげると良いでしょう。

予防的投与って何?抗インフルエンザ薬を使う前に

インフルエンザ治療薬違い

インフルエンザの予防には、早めに『予防接種』を受けておくことが大切です。

実は、今回紹介したような治療薬も、インフルエンザ予防のために服用することができますが、『自費診療』となります。

タミフル・リレンザ・イナビルがその対象です。

身近な家族が感染した時などの水際作戦として有効です。

予防的投与を行う際は、通常の治療の時とは用法・用量が異なります。医師の指示に従い、正しく服用しましょう。

 

用法・用量を守ることが大事

インフルエンザ治療薬違い

1回で治療を完結させるイナビルやラピアクタを除くと、病院で処方されたインフルエンザ治療薬がまだ残っているけれど症状が良くなってきた、ということがよくあります。

しかし、『処方された治療薬は必ず最後まで使いきりましょう。』

インフルエンザでは、症状がなくなってもウイルスはまだ体内に残っています。

そのため、治療を中断してしまうと再びウイルスが増殖を始めてしまう危険性があるのです。

医師の指導に従って正しく服用することと、服用していて少しでもおかしいと思うことがあったらすぐに医師に相談することが、何よりも大切です。

まとめ

インフルエンザ治療薬違い

今回は『インフルエンザ治療薬の作用機序・インフルエンザ治療薬の特徴・治療薬の副作用・治療薬の予防投与について』紹介をしました。

インフルエンザかなと思ったら、すぐに医療機関を受診し、インフルエンザ治療薬を使用しましょう。

ウイルスが増えきった状態で抗インフルエンザ薬を服用しても意味が無いため、48時間以内に服用します。

用法用量を守ってインフルエンザ治療薬を正しく使って症状の悪化を防ぎましょう。

 

インフルエンザ治療薬違い

1 個のコメント

  • びーこん より:

    タミフルは以前問題になってニュースになっていたのを思い出しますが、もう大丈夫になったのでしょうか?色んな薬を有効に使用してインフルエンザを乗り越えたいですね。

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