冬に近づくにつれて、インフルエンザが流行し始めます。
インフルエンザの症状は全身がだるい、高熱が出るなどの症状が一般的です。
しかし、小さい子たちがインフルエンザにかかると、意識障害やけいれんといった恐ろしい症状が出てくることがあります。
もしかしたら、それはインフルエンザ脳症によるものかもしれません。
今回は『インフルエンザ脳症の仕組み、インフルエンザ脳症の予防方法』について紹介します。
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インフルエンザ脳症てそもそも何?

インフルエンザ脳症はインフルエンザの流行に伴い、『5歳以下の乳幼児に発症する病気』です。
日本では、1年間に50~250人の方がインフルエンザ脳症になっています。
インフルエンザ脳症では意識が障害されるため、声をかけても意味不明な返事をしたり、目も開けなくなったりすることがあります。
また、後遺症が残ることもあるため、その予防をすることが重要となる病気です。
脳症は、なぜ起こる?

ところで、脳症は、なぜ起こるのでしょうか。
まだ、はっきりと原因が解明されていませんが、次のような仮説があります。
- インフルエンザウイルスは、最初『鼻粘膜に感染』して、ここで増殖して全身に広がります。
- 当然、脳内にもウイルスが侵入していると思われます。
- ところが、脳症では、脳内からウイルスが検出されたことは殆どありません。
- つまり、脳症はウイルスが直接脳内に侵入しなくても発症するのです。
- インフルエンザの病原性(毒性)は、きわめて強く、このため体を守る働きをする免疫系が強烈なダメージを受けます。
- 免疫を調節し、体内に侵入した病原体を排除する物質をサイトカインと言います。
- サイトカインには多くの種類があり、相互に連携を取り合って働いています。
- これを『サイトカインネットワーク』と言います。
- インフルエンザは、このサイトカインネットワークを障害します。
- その結果、過剰な免疫反応が起きて、『高サイトカイン血症』という状態になります。
- 脳内では、高サイトカイン脳症という状態になり、免疫が正常に機能しないため、『けいれん・意識障害・異常行動』などが見られるようになります。
- さらに多くの細胞が障害を受け、全身状態が悪化すると、呼吸が止まったり、血管が詰まったりし、多くの臓器の障害(多臓器不全)へと進み、命に関わる重症となります。
- 鼻粘膜に一番近い脳は、側頭葉といって、『感覚・感情を調整する働き』を持っています。
- 側頭葉が障害を受けると、『感覚・感情の変化→幻覚・幻聴などの異常行動』がみられることになります。
以上まとめますと、脳症の進行は次の四段階に分けられます。
- ウイルスの感染と鼻粘膜での増殖『この段階の症状は、熱、鼻汁、咳などのカゼ症状』
- 免疫系の障害→高サイトカイン血症『脳内では、高サイトカイン脳症→けいれん、意識障害、異常行動』
- 多くの細胞が障害を受け、全身状態が悪化
- 血管が詰まったり、多くの臓器の障害『血管炎~多臓器不全』
インフルエンザ脳症3つの症状

インフルエンザ脳症の症状は、
- 意識障害
- けいれん
- 異常行動
の3つの症状が代表的です。
ここでは、この3つの症状について詳しく説明します。
1.意識障害
インフルエンザ脳症では急速に意識障害が進行します。
最初は声をかければ返事をしていたのに、意味不明な返事をするようになり、ついには返事もせず眼も開けなくなります。
この過程が『急速に進行する』のがインフルエンザ脳症の特徴です。
2.けいれん
インフルエンザ脳症では意識障害とともにけいれんも生じます。
インフルエンザ脳症のけいれんでは、10分ほど続き、両手がけいれんすることもあれば、15分以上けいれんすることもあります。
3.異常行動
異常行動とは具体的に、
- 人を正しく認識できない。
- 食べ物とそれ以外の区別ができない。
- 幻視がみえる。
といった症状のことを言います。
インフルエンザ脳症になると、両親や兄弟が分からなくなったり、自分の手を噛んだり、アニメのキャラが見えるなどの異常行動が見られることがあります。
インフルエンザ脳症を予防するために必要な3つのこと

インフルエンザ脳症を予防するには、『インフルエンザにかからないこと』が最も重要です。
そのためには、まずインフルエンザワクチンを打ちます。
しかし、インフルエンザワクチンを打っても、ワクチンの型と流行したウイルスの型が異なれば、インフルエンザになる恐れはあります。
そこで、インフルエンザワクチンを打った後も、インフルエンザにかからないように予防をする必要があります。
具体的には、
- 外から帰ってきたら手洗いうがいをする。
- マスクをする。
- インフルエンザが流行しているところには行かない。
などです。
特に、5歳以下のお子さんがいらっしゃる方は、お子さんがインフルエンザ脳症になりうるので、ぜひインフルエンザの予防をしてください。
ワクチンはインフルエンザ脳症を予防できるか?

一時期、ワクチンを接種すれば脳症にかからないといわれたこともありましたが、ワクチン接種していても脳症にかかる場合はあります。
ただ、ワクチンを接種しても免疫のでき方は個人差が大きいですし、2才くらいまでは免疫のでき方も十分ではないこともありますので、ワクチン無効とは決めつけられないと思います。
ワクチンは毎年接種を続ければ、だんだん免疫も高まりやすくなりますので、やはり、乳児期からでも積極的に接種した方がよいと思います。
仮に今年度十分効果が見られなくても、毎年接種を続ければ次年度以降免疫が高まってきます。
脳症の発症が、1~5才頃に多いことを考えると、『生後6ヶ月から積極的に接種した方が良いです。』
タミフル・リレンザ・ラピアクタ・イナビルは脳症に効くか?

インフルエンザ脳症が、どのようにして起こるのでしょうか?
まだ不明な点も多く、抗インフルエンザ薬が脳症を抑制できるかどうかはわかりません。
いったん体内に入ったインフルエンザウイルスは猛烈な勢いで増え続けて、症状が出てから『2~3日後(48~72時間後)』に最も数が多くなります。
ウイルスの量が最大になる前、つまり症状が出てから48時間以内に抗インフルエンザ薬を使って増殖を抑えれば、病気の期間を短くし、症状の悪化や脳症などの合併症を防ぐことができる可能性はあると思います。
しかし、脳症の進行はきわめて早いため、既に脳症になっていれば、つまり、けいれん、意識障害、異常行動などが見られるようになってからでは、効果が期待できないかもしれません。
まとめ

子どもたちに意識障害やけいれん、異常行動が起こると、親御さんは非常に心配になりますよね。
インフルエンザ脳症は一度発症すると、インフルエンザ脳症は後遺症を残す恐れがあります。
今回は『インフルエンザ脳症の仕組み、症状、予防方法』について紹介しました。
『子どもたちの将来を守るため』にインフルエンザの予防をし、インフルエンザ脳症になるのを防ぎましょう。
インフルエンザ脳症、避けたい病気です。私は小学生のとき風邪にかかって家で布団の中で寝ていた時、けいれんを初めて経験しました。
インフルエンザは怖い病気ですね。気絶してしまうこともあるなんて…今まで生きてきた中で気絶した経験はありますが、自転車で事故をおこした時でした。