子供の腹痛はよくみられる症状です。
原因は便秘や胃腸炎が一般的ですが、なかなかその症状を訴えることが子供には困難のようです。
症状や程度によって、手術や治療に医師の手をわずらわせるなど原因によっては、便秘や胃腸炎も手術が必要な病気が潜んでいる可能性もあります。
子供の腹痛から考えられる病気を紹介していきます。
『お腹が痛い』と子供から訴えられたときに参考にしてみてください。
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『お腹痛い!』考えられる子供の病気

便秘
子供の腹痛の原因として一番多いのは便秘です。
赤ちゃんから小学生まで幅広い年齢層でよくみられ、割合は30~40%を占めるとされています(意気健康より)。
便秘の原因は
- 水分不足や好き嫌いで食物繊維を摂らないなど食生活の偏り
- なかなか便が出ないことで肛門が切れて痛むために排便を我慢して起こるケース
- 環境の変化など精神的ストレスによるもの
- 生まれつきの腸や肛門の病気
などさまざまです。
2~3日出ていなかったり、お腹を優しく触ると左下に硬くなった便を感じた場合は市販の浣腸を使ってみます。
そうして腹痛が治まれば問題はありません。
ただ浣腸を繰り返し使うことは好ましくないため、原因を把握して改善し、しっかりとした排便習慣を身に付けさせることが必要です。
便秘がみられる腸や肛門の病気には、
- 腸管の神経節細胞がなく、腸が動かないために嘔吐、お腹の張りなどを伴うヒルシュスプルング病
- 肛門が生まれつき上手く作られずに位置のずれや小さな穴がみられる鎖肛(直腸肛門奇形)
があります。
二つとも手術を伴い、排便訓練など長期で治療に取り組んでいきます。
日本小児外科学会の資料によりますと、ヒルシュスプルング病と鎖肛(直腸肛門奇形)に関して次のように報告されています。(一部抜粋)
ヒルシュスプルング病
消化管の動きを制御する力を持っている腸の神経節細胞が、生まれつき無いために重い便秘症や腸閉塞をおこす病気です。
この病気では腸の神経節細胞が肛門から口側に様々なところまで連続してみられないことが特徴です。
症状は新生児や乳児の時期にみられることが多いです。
生まれつき便が出にくい『便秘気味』のお子さまは大変多いのですが、この病気ではおなかの張りが非常に強く
- 嘔吐を伴うことや
- 重い腸炎
- 腸に壊死や穿孔
が起こって危険な状態になることもあります。
診断は小児の一般的な診察や検査のほかに専門的な検査を行います。
治療は手術が必要です。
神経節細胞のない腸を切り取り、神経節細胞のある口側の正常の腸を引き降ろして肛門とつなげることが基本です。
鎖肛(直腸肛門奇形)
肛門は食べた物が消化管を通って体の外に出る最後の部分で、便を外に出すという大切なはたらきをもっています。
鎖肛(直腸肛門奇形)とは、この肛門が生まれつきうまく作られなかった病気で、
- おしりに肛門が開いていないものから
- 小さな穴(瘻孔)がみられるものや
- 肛門の位置がずれているもの
までさまざまです。
その症状は、
- おしりを診ただけでわかることもあり,多くは生まれたときに診断されます。
- 出まれてすぐに体温を計るとき直腸に体温計が入らないことで診断されることがあります。
- お乳を与えていておなかが張ってきたり吐いたりすることから発見されることもあります。
その治療法は、病型によって治療方針が大きく異なりますので,速やかに病型診断をします。
直腸末端の位置による分類で
- 低位型
- 中間位型
- 高位型
の3グループに分けるこ とが一般的です。
便秘の他にみられる6つの症状

感染性胃腸炎
便秘の次によくみられるのが感染性胃腸炎です。
ウイルスや細菌を原因に、突然の下痢と腹痛に襲われ、発熱や嘔吐を伴うこともあります。
身体の水分が失われやすく、脱水症状が起こりやすくなります。
ひどい場合は入院して治療するようになります。
主な原因は
- ノロウイルス
- ロタウイルス
です。
- ノロウイルスは1年を通して発症し、特に冬にかけて流行します。
- ロタウイルスは3~5月にかけて多くみられ、乳幼児期(0~6歳)にかかりやすいです。
かかった場合は水分と栄養補給をしっかり行います。
下痢止めはウイルスをお腹にとどめてしまうため、使わないようにしましょう。
風邪
風邪にかかって便秘になることもあります。
- 鼻水や咳
- のどの痛み
- 頭痛
- 身体のだるさ
- 寒気
- 食欲がない
- くしゃみ
- 鼻づまり
- 発熱
などの症状とともに、下痢や便秘の症状とともに腹痛がみられます。
心因性
年齢が大きくなるにつれてよくみられるようになるのが
- ストレス
- 不安
- 緊張
などから起こる心因性の腹痛です。
胃炎や十二指腸潰瘍を発生することがあります。
友達といった人間関係などで悩んでいるケースがあるため、子供とコミュニケーションを取るなどして原因の解決を目指していきます。
急性虫垂炎
小学生の中高学年男子によくみられるのが虫垂炎です。
盲腸の先に垂れ下がって付いている虫垂に炎症が起こり、
- 腹痛
- 嘔吐
- 発熱
がみられます。
右下腹部痛が一般的な症状として知られていますが、みぞおちやおへその周りが最初に痛み、右下腹部へと痛みが移っていきます。
このほか機嫌が悪くなったり、元気がないなど普段と異なる様子を示すケースがあります。
炎症が強くなると虫垂が破れて膿が外に出て腹膜炎を起こすこともあるので、早期に発見して手術して治療することが重要です。
腸重積症
生後6か月前後の乳児によくみられます。
急に顔面蒼白となってぐったりし、便に粘液と血が混じり、嘔吐がみられます。
小腸の終わりにある回腸が大腸に入り込み、腸管の血管が破れて血が出てるほか、腸の中の便が詰まって腸閉塞を起こします。
血液の流れが阻害されて腸の組織が死んでしまう病気なので、一刻も早い診断と治療が必要です。
肛門から圧を加えて腸を整えたり、腸を切り取る方法があります。
ヘルニア嵌頓(かんとん)
鼠径ヘルニア(脱腸)によって出てきた腸の一部が陰嚢の方へ出てきた時に元に戻らず、締め付けられて組織が死んでしまう状態を嵌頓といいます。
鼠径部が赤く腫れて激しい痛みが生じます。
便秘などを伴わず子供が痛んで不機嫌になった場合は、慌てず病院を受診しましょう。
自然に治ることもありますが、手術で対応していくのも一般的です。
まだ自分でお腹の痛みを訴えることのできない乳幼児では
- 激しく泣く
- 機嫌が悪い
- 食欲がない
- ぐったりしている
- 顔色が悪い
- 嘔吐する
- お腹を触ると嫌がる
などの様子で原因を判断していきます。
言葉で訴えられる子供の場合でも、
- どの程度痛いのか
- どこが痛いのか
- 心因性のものではないか
など腹痛の原因を判断するのは難しく、保護者の情報が重要になります。
普段から子供の様子をよく観察し、『何かおかしい』と思ったら早めに医療機関を受診するようにしましょう。
ま と め

大人でもお腹が痛む、便秘気味かななどと悩むことがあります。
ましてや子供になると、まだ痛さや不快感があってもなかなか伝えることができません。
お腹が痛いと言っても、それが便秘が原因なのか或いは胃腸炎が原因なのか、グズる子供にきいてもわからない。
子供にとっては、それが胃腸炎だとしても便秘だったとしても体調不良の原因になってきます。
悩むより専門家に聞いてみること。
おかしいともったら病院に相談することが良いのです。
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