樹木希林さんや小林麻央さんのような有名人が『がん』との闘病と仕事の両立に積極的に取り組み、色々な意見を公表しています。
『がん』と言う重い病の中で樹木希林さんや小林麻央さんの姿勢には、感銘するものがあります。
闘病と仕事の両立について考えてみたいと思います。
お好きなところからどうぞ
がん患者が離職せず働き続ける社会の実現

2013年に『全身がんだらけ』をカミングアウトして以降、奇跡的な復活を遂げて、現在も女優業を精力的にこなしている樹木希林さん(74)です。
乳がん闘病中の想いを綴るブログが支持を集め、英国BBCの『影響力を持ち、人の心を動かす女性100人(2016)』に日本人として初めて選ばれた小林麻央さん(34)です。
そんな女性たちの闘病姿勢が共感を呼ぶ一方、昨年12月21日に国立がん研究センターから『がん』が直接の死亡原因になる死亡率が減少していることの発表をしました。
その内容は、75歳未満のがんによる死亡率の減少割合が2005年からの10年間で約16%に留まったとのことでした。
事前に国の目標(20%)を下回る結果は予測されてはいましたが、それを裏付ける喫緊の実測値が明かされました。
死因統計
公益法人日本対がん協会の資料(2015年調査報告)によると、死因のトップは
- 男性 肺がん
- 女性 大腸がん
と言う報告があります。
肺がんは男性では1993年に胃がんを抜いて、死因のトップになりました。
女の肺がんも大腸がんと同様、死者が増え続けています。
がん部位別死亡者数統計表(出所:厚労省 人口動態統計2015)から抜粋したものです。
食道がん
- 男子 9,774人 女性 1,965人
胃がん
- 男性 30,809人 女性 15,870人
大腸がん
- 男子 26,818人 女性 22,881人
肝臓がん
- 男性 19,008人 女性 9,881人
胆嚢・胆管がん
- 男性 9,066人 女性 9,086人
膵臓がん
- 男性 16,186人 女性 15,680人
肺がん
- 男性 53,208人 女性 21,170人
前立腺がん
- 男性 11,326人
乳房がん
- 女性 13,586人
子宮がん
- 女性 6,429人
卵巣がん
- 女性 4,676人
悪性リンパ腫
- 男性 6,656人 女性 5,173人
白血病
- 男性 5,104人 女性 3,527人
その他がん
- 男性 15,498人 女性 12,545人
という報告がありました。
2016年12月9日に「改正がん対策基本法」が衆院本会議で可決・成立しました。
基本理念として、『がん患者が尊厳を保持しながら安心して暮らすことのできる社会の構築を目指すことを掲げ、がん患者への国民の理解が深まるようにすること。』を求めました。
今回新たに、企業側の『事業主の責務』を設け、働く人ががんになっても雇用を継続できるよう配慮することを明記されました。
国や地方公共団体にも、事業主に対してがん患者の就労に関する啓発・知識の普及へ必要な施策を講じるよう定めているものです。
同改正法は『患者が安心して暮らせる社会』を謳い、がん診断後も患者が就労と治療を両立できるよう企業側の配慮を求めています。
しかし『ボランティア精神に依存』する本末転倒の患者支援という問題点については疑問がのこります。
【ボランティア依存に関する項目抜粋】
がん患者会は、任意団体かNPOとして運営される。
会員制による年会費、寄付金や助成金が運営資金である。
活動の場から見ると、病院内で運営される患者会と病院から離れて地域社会の中で活動する患者会の2つの形がある。
いずれも、活動費は不十分なことが多く、会員のボランティアに依存する面が強い。
6割以上の経営者が『無理』

2016年4月に、がん患者の就労支援に取り組む一般社団法人「CSRプロジェクト」(Cancer Survivors Recruiting Project)が行なった全国調査があります。
調査対象は、従業員300人以下の中小企業経営者および個人事業主の計200人に対して実施されてものでした。
その結果、改正法の掲げる『理想(目標)』とは程遠い事業主側の本音(現実)が浮き彫りにされました。
就労と治療の両立に関する問いに
- 難しい
- 無理
という回答が122人あり、『全体の61%』を占めています。
また、両立の障害理由を尋ねた質問(=複数回答)については、
- 事業規模からして余裕がない 93人
- 仕事量の調整が難しい 42人
との現場性が露呈し、
- どのように処遇していいか分からない 28人
という戸惑いの本音が3位の結果がありました。
では、一重に『中小企業』と呼ばれているが、国内の企業数全体の99.7%を占めているのを、あなたはご存じでしょうか。
昨春発表された中小企業庁の概要によれば、全国の中小企業数は380万9000社あります。
その中小で働く3361万人という従業員数も全体の70.1%を占めています。
にもかかわらず、先程のCSR調査の就労と治療の両立に関するすべての質問を通じて、
『問題ない』と答えた事業主は、200人中71人(35.5%)と言うことでした。
中小企業従事者のがん失職率も3倍超

また、同時期にCSRが全国の患者300人を対象に実施した調査でも、がんの診断後の『大手』と『中小』の実相差が確認されています。
診断後の失職率が
- 従業員500人以上の企業 5.1%
- 従業員500人未満の企業 16.8%
と『「3倍以上』の数値が弾き出され、企業規模が小さいほど高い離職率を示しています。
調査概要によれば、中小経営者が国などに求める具体的な支援策は、休職中社員の社会保険料の会社負担減免や、患者の就労継続に取り組む企業への助成金などが多かったといっています。
国や自治体は障害者・高齢者の雇用企業への助成金制度は設けているものの、がん患者雇用を促す制度は、いまだ確立されていないのが現状です。
高齢者定義の引き上げ?

折しも内閣府は昨年末、技術革新などがなされない場合の、生産年齢人口減(2030年で1%減)による低成長定常化を想定し、高齢者の定義を『70歳以上』に引き上げることも提案しています。
そして新年を迎えた5日には、日本老年学会・日本老年医学会が従来「65歳以上」とされてきた高齢者の定義を『75歳以上』にするべきだと提言しました。
【平成27年簡易生命表】:余命と寿命は?
平均余命について、平成27年簡易生命表によると
- 0歳 男性80.79歳 女性87.05歳
- 10歳 男性71.05歳 女性77.30歳
- 20歳 男性61.17歳 女性67.37歳
- 30歳 男性51.46歳 女性57.51歳
- 40歳 男性41.80歳 女性47.73歳
- 50歳 男性32.39歳 女性38.13歳
- 60歳 男性23.55歳 女性28.83歳
- 70歳 男性15.64歳 女性19.92歳
- 75歳 男性12.09歳 女性15.71歳
高齢者定義『70歳、75歳』という議論もうなずけることも伺えるような余命表です。
これを実年齢に戻すと
平成27年0歳
- 男性80.79歳 女性87.05歳
平成27年」70歳
- 男性85.64歳 女性89.92歳
平成27年75歳
- 男性87.09歳 女性90.71歳
というようになります。
このことからすると、老化という域内に入ってきていることは否めないとしても70歳・75歳未だ現役という風にみえてくるという、いわば高齢化社会の現象が如実にわかるようです。
そして、平均寿命が、
- 男性80.79歳 女性87.05歳
となっているようです。
確かに、平成2年の平均寿命から男性が4.87歳・女性が5.15歳伸びていることが伺えます。
悪性新生物による年代別死亡確率
さらに、死亡確率の悪性新生物(がん)による死亡確率の将来を予測した統計を見ても高齢者の定義を『70歳・75歳』に引き上げようとする意図が理解できるような現象を感じてしまうようです。
死因別死亡確率(主要死因)の推移を見ても、悪性新生物による死亡確率が、平成27年統計では
平成27年0歳
- 男性29.34% 女性20.21%
平成27年65歳
- 男性28.89% 女性18.41%
平成27年75歳
- 男性25.44% 女性16.18%
平成27年90歳
- 男性15.08% 女性9.64%
となっています。
他の・心疾患・脳血管疾患・肺炎等による死亡確率を含めて傾向を見てみると、
- 0歳では男女とも悪性新生物が最も高く、次いで、心疾患、肺炎、脳血管疾患の順になっています。
- 65 歳では男女とも0歳に比べ悪性新生物の死亡確率が低く、他の3死因の死亡確率が高くなっています。
- 75 歳では更にこの傾向が強くなっていいます。
- 90 歳では男女とも脳血管疾患の死亡確率が75 歳より低くなっています。
悪性新生物(がん)による死亡確率は、平成27年0歳が最も高く、高齢になるにつれその確率が低下してきているという、若年化の傾向が顕著になってきていることが伺えます。
悪性新生物(がん)との戦いは、医療技術の向上に反するように若年化の傾向は『がんの脅威』を感じせざるを得ないのではないでしょうか。
2030年高齢者定義変更?その時の余命年齢は?
2030年生産年齢人口減少予測に基づく高齢者定義の引き上げ提案によるところの、2017年統計からの平均余命は次の通り推定できます。
13年後の70歳・75歳前後の人の平均余命
- 男性83.55歳 女性88.83歳
働き盛り真っ最中の40歳代の人の平均余命
- 男性81.46歳 女性87.51歳
となるようです。
『悪性新生物(がん)』による死因別死亡確率が若年化の傾向にあり、さらには平均余命率の低下傾向からすると、高齢者定義の引き上げという議論も慎重にならざるを得ないことが伺えます。
日本人の死因第1位は変わらず「がん」、その「75歳未満」の死亡率減が目標値を下回る以上、そんな論議もどこか空しく響くようです。
ま と め

がんとの戦い。
年齢的にも高齢の域にいる樹木希林さん、働き盛りにいる小林麻央さん。
がん治療という重い苦しみの中でも『闘病と仕事の両立』への意欲は、並々ならぬ思いがあるようです。
高齢者定義の引き上げ議論やその根拠となるような統計で改めて『がん』という病の脅威、さらには『闘病と仕事の両立』の難しさを知らされています。
樹木希林さんや小林麻央さんの闘病姿勢を感じ、高齢化社会や両立に向けた改めた考えを確認したいものです。
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