中国の大気汚染で騒がれる昨今、問題は『PM2.5』。
PM2.5の恐怖は私たちの健康をも脅かす存在です。
大気汚染の異常な数値をたたき出している『PM2.5』ですが、一体健康にはどんな影響があるのでしょうか?
年齢問わず襲い掛かるPM2.5の健康被害について詳しくご紹介していきます。
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【PM2.5】世界で〇〇万人が5歳未満で死亡

大気汚染が原因とされる疾患によって、世界で年間約60万人が5歳未満で死亡しているいます。
『国連児童基金(ユニセフ)』はこのような衝撃的な報告書を発表。
11月7日からモロッコで始まる『気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)』で、各国に対応を促す狙いがあるようです。
報告書では、約20億人の子どもが微小粒子状物質『PM2.5』の世界保健機関(WHO)基準を超える地域で生活していると推計しています。
その内の約3億人が、大気汚染レベルの最悪(PM2.5がWHO基準の6倍を超える)とされる地域で暮らしているのです。
地域別では、南アジアが約2億2000万人で圧倒的に多い状況です。
それを裏づけるかのように、インドの首都ニュー・デリーではWHOが定めた基準値の90倍の濃度のPM2.5が検出された(1㎥あたり900μg)のです。
ヒンズー教の祭りの花火の影響で、道の向こう側が見えないほど白い空気が立ちこめたと程でした。
心臓や呼吸器に問題がある人や高齢者には、外出を控えるように勧告も出されたのです。
日本でも、外務省が海外安全HPでインド・デリーのスポット情報を発出。
大気汚染の激しい時には可能な限り外出を控えることを推奨したほど。
外出時には、PM2.5を95%以上遮断する『N95』というマスクの着用や、屋内では空気清浄機などの使用とともに、うがいと水分補給を励行しました。
年齢問わず血管が損傷される!?

PM2.5がもたらすリスクに対して警鐘を鳴らしている現状は今も続いており、健康被害に関してもいろいろなことがわかってきました。
PM2.5で汚染された空気を毎日吸い込むと、脳に変化が生じ、認知機能障害をもたらす可能性があるのです。
そして、PM2.5にさらされて健康リスクが生じるのは、疾患のある人や高齢者だけではないんです。
新たな知見として、若くて健康な成人でも、血管が損傷される可能性があることが判明した。
PM2.5が脳を萎縮させる!? 認知機能低下のハイリスク
地球温暖化の原因であり、私たちの健康にも悪影響を及ぼす大気汚染。
近年では、大気汚染物質の微小粒子PM2.5が、中国から大量に飛来する可能性があると報じられ、日本でも大きな問題になっています。
米国心臓協会学術 “STROKE” に掲載された研究論文で『PM2.5で汚染された空気を毎日吸い込むと、脳に変化が生じ、認知機能障害をもたらす可能性がある』ことが示されたのです。
調査対象者は、米国ニューイングランド地方に住む60歳以上の943人の健康な成人。
MRI(磁気共鳴映像法)で対象者の脳の構造を調べ、その画像と居住地域の大気汚染レベルとの関係を調査しました。
無症候性脳卒中リスクが〇割上昇
この研究では、大気中のPM2.5が1立方メートルあたり2マイクログラム(μg/m3)増えると、脳容積が0.32%減少することが判明しました。
2μg/m3の増加は、ニューイングランドやニューヨークの大都市圏で普通に見られる範囲です。
PM2.5の成分
粒径が2.5µm(1µmは1mm の1000分の 1)以下という非常に小さなPM2.5は、
- 炭素
- 硝酸塩
- 硫酸塩
- アンモニウム塩
- ケイ素
- ナトリウム
- アルミニウム
などを成分とし、肺の奥まで入り込みやすく、呼吸器系や循環器系などに影響を与えることが懸念されています。
発生源は、ばい煙や粉塵を発生させる工場など複数考えられるが、最も一般的なのは排出ガスを出す自動車なんです。
この論文の研究著者で、ボストンのベス・イスラエル・ディーコネス医療センター心血管疫学研究ユニットの研究者、エリサ・H・ウィルカー氏は、
「この脳容積の変化は、脳の老化約1年分に相当するものです」
と説明しています。
一般的に脳容積の減少の原因は、加齢に伴うニューロンの喪失であるというのです。
また、PM2.5が2μg/cm3増えると、無症候性脳卒中発症のリスクも46%高くなったという結果が出たんです。
この無症候性脳卒中とは、脳スキャンでは検知されても通常は症状が見られない脳卒中を指し、認知機能の低下や認知症と関連があるといわれています。
研究では、より大気汚染レベルの高い(PM2.5の濃度が高い)地域の住人は、少ない地域の住人よりも脳容積が小さく、無症候性脳卒中のリスクが高いことも明らかになりました。
大気汚染と子供の脳の関連性を調べた研究はこれまでにもあったが、高齢者を対象に大気汚染、脳容積、そして無症候性脳卒中リスク間の関連性を調査した研究は、これが最初のもののようです。
大気汚染が人々の脳をどのように変化させるかは不明ですが、大気汚染が炎症を増加させるのではないかと推測されています。
同研究によると、過去の調査で脳容積の減少と炎症マーカーに関連があることがわかっているとのことです。
ウィルカー氏はこの研究結果に関して、
大気汚染と脳卒中や認知機能障害のような深刻な脳疾患との関連性を理解するのに、非常に重要なものになります
と述べています。
なお、日本におけるPM2.5など大気汚染物質濃度の測定データは、環境省の大気汚染物質広域監視システム『そらまめ君』や、各都道府県のホームページで公開されています。
大気汚染の悪化が与える問題

『Circulation Research』(オンライン版)に掲載された、米ルイビル大学(ケンタッキー州)糖尿病・肥満センターのTimothy O’Toole氏らが実施した研究によると、大気汚染と若年者の血液の異常変化が関連づけられ、時間の経過とともに心疾患につながる可能性があるといいます。
被験者は米ユタ州に居住し、喫煙していない健康成人72人(平均年齢23歳)。
ユタ州プロボではその気象パターンと地理的特徴から、定期的に顕著な大気汚染が生じます。
そのため
- 2013年
- 2014年
- 2015年
の冬期の大気の変化にあわせて、被験者の血液検査を実施しました。
その結果、大気汚染レベルが上昇すると、細胞の損傷および細胞死の徴候が増大してしまったのです。
血管新生を抑制するタンパクや、血管の炎症を示すタンパクのレベルも大気汚染に伴って上昇していました。
O’Toole氏は、
今回の結果から、汚染された環境に住むとこれまで考えられていたよりも、高率でなおかつ早期に、高血圧・心疾患・脳卒中を発症する可能性があることが示唆された
とコメントされました。
さらに
大気汚染の悪化は、高リスク群に心臓発作や脳卒中を生じさせる可能性があるだけなく、全ての人にとって問題となる
と述べています。
【対策】PM2.5の現状
PM2.5とは前述したように、大気中に浮遊している粒径2.5μm(髪の毛の太さの30分の1程度)以下の物質。
肺の奥まで入りやすく、肺がんや呼吸器・循環器系への影響が懸念されます。
工場のばい煙や排ガス、タバコの煙にも含まれています。
日本の基準値は、1㎥あたり年平均15μm以下。
1日平均では35μm以下です。
中国では軍も大気汚染対策に介入。
日本はJTが『気配り、思いやり』程度の認識となっています。
一方で、大気汚染、PM2.5に悩む中国では日常生活で使用する防護用マスクの国家基準を施行しました。
中国初の『日常防護用マスク国家基準』で、PM2.5の遮断効果や安全性が明確に規定されたのです。
さらに、中国軍も大気汚染対策に介入しました。
ピンポイントで汚染源を封鎖することで、速やかな大気汚染改善が実現できるという『全国大気品質高精度予報・汚染コントロール決定支持システム』(NARS)を発表したのです。
まとめ

ここ数年、中国からの飛来物質による大気汚染の悪化が懸念された日本では、PM2.5の国内での発生率は減少しています。
しかし、タバコの煙も典型的なPM2.5。
いまだ『受動喫煙』による健康被害を軽く捉えている日本では、タバコの煙によるPM2.5リスクもバカにできません。
国立がん研究センターの『肺がんリスクが確実』という発表に対して、日本たばこ産業株式会社(JT)が『リスクの関連性は明確ではない』と反論する始末(笑)
ちなみに、日本禁煙学会の資料によれば、屋内のPM2.5濃度は、
- 喫煙家庭が『弱者に危険』
- 自由喫煙のパチンコ店が『危険』
- ファストフード店の喫煙席や居酒屋、喫煙中のタクシー内などは『緊急事態』
レベルの数値を示したといいます。
いわば、喫煙者は『歩くPM2.5』と言い換えてしまうことも。
国立がん研究センターがJTに返した受動喫煙は『迷惑』や『気配り、思いやり』の問題ではなく、『健康被害』『他者危害』の問題であるというメッセージは、大気汚染レベルの警告だったということになります。
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